第4回|ここまで広い!デジタル遺品という“見えない世界”を整理する
──スマホ・銀行・サブスク・SNS…全体像を行政書士が解説
前回(第3回)では、デジタル遺品という言葉を“身近な生活情報”として捉え直し、
「これは元気なうちの暮らしをラクにする整理です」とお伝えしました。
今回はいよいよ、デジタル遺品の全体像が“ひと目でわかる”回です。
スマホ・銀行・契約・SNS・写真……私たちの日常の大半は「見えない情報」で構成されています。
まずはその種類を知ることから安心が始まります。
【Ⅰ】デジタル遺品は3つの大きなグループに分かれる
① お金・財産に関するデジタル情報
- ネット銀行(楽天銀行/住信SBI/PayPay銀行など)
ログインしないと残高が確認できないケースが多くなりました。 - 証券会社(SBI証券/楽天証券/NISA・iDeCo など)
気づかれにくく、放置されるリスクが高い分野です。 - クレジットカード・電子マネー
紙の明細書がなく、Web配信が主流。PayPayやSuicaなど“残高=財産”であるものも含まれます。 - ポイント(楽天/dポイント/Tポイント など)
相続の対象外になりやすく、放置すると失効する可能性があります。
② 毎月引き落とされる“生活契約”
- 通信関連(スマホ・Wi-Fi・クラウド容量)
docomo/au/SoftBank、iCloud、Google One など。 - サブスクリプション(動画・音楽・電子書籍)
Netflix、Amazon Prime、Spotify、Kindleなど、
「気づかないまま課金」が最も多い領域です。 - 公共料金のオンライン化
電気・ガス・水道・NHKがメール配信になると、家族が把握できません。 - オンライン講座・健康アプリ
小さな課金でも月額の積み重なりは大きくなります。
③ 個人的な記録・思い出・人間関係の情報
- SNS(LINE/Instagram/Facebook/Xなど)
連絡先・写真・メッセージが詰まっており、最も個人的な領域です。 - メール(Gmail/Yahooメール/キャリアメール)
通知とパスワード再発行の入口となる重要情報。 - 写真・動画(Googleフォト/iCloud)
取り戻せない人生の記録。その価値は非常に大きい。 - 趣味・創作データ(楽譜・音源・ブログ等)
本人にしか分からない価値ある記録が多いため、放置されると消失しやすい領域です。
【Ⅱ】スマホが“金庫の鍵”となる理由
スマホが開かないと何も始まらない。
デジタル遺品の最大の問題点はここにあります。
- ロック番号
- 指紋・顔認証
- Apple ID/Googleアカウント
- 2段階認証のSMS
これらはすべて本人にしか分からない情報です。
スマホが開かなければ、資産管理も契約解約も写真データの確認もできません。
【Ⅲ】なぜこんなに複雑なのか?
- 契約がメール通知だけで完結する
- ID・パスワードが乱立している
- 毎月の支払いが自動更新される
- 本人だけが把握している契約が多い
- スマホが“第二の家財道具”になっている
しかし、種類と構造を理解すれば、
「私にも整理できる」という手ごたえが生まれます。
■ 次回(第5回)の予告
今日からできる「3つの整理ステップ」をご紹介します。
- スマホロック・IDの管理
- 毎月の契約の洗い出し
- 写真データのバックアップ
ここまでできれば、おひとりさまの不安の大半は軽くなります。
次回はいよいよ“実践編”です。