2025/11/24

《第7回》あなた自身が「ひとつの会社」──事業は、あなたの人生の姿勢そのもの

《第7回》 あなた自身が「ひとつの会社」──事業は、あなたの人生の姿勢そのもの

法人をつくることは法律上の手続にすぎません。しかし「事業を始める」という行為は、もっと本質的で個人的な決断です。それは、自分の人生の舵を自ら握るという宣言であり、あなたという存在そのものを社会の中で“ひとつの会社”として立ち上げることと同じ意味を持ちます。

1.理念は、自分の「人生の軌跡」からしか生まれない

経営理念とは、立派な言葉を並べて作るものではありません。理念の源泉はもっと静かなところにあります。あなたが何に怒り、何に救われ、何に心を動かされて生きてきたのか。どんな人を大切にし、どんな場面で誇りや悔しさを感じてきたのか。

理念とは、あなたの“これまで”と“これから”を貫く一本の軸です。だからこそ、事業を始めようとする人には、まず自分史を振り返ってほしいのです。

2.事業の原点は「生活者としての視点」

良い経営者であり続けるために大切なのは、「生活者としての視点」を失わないことです。仁徳天皇の「民のかまど」の逸話が示すように、善政や善き経営の指標は、自分の利益ではなく、関わる人々の生活が守られているかどうかにあります。

3.小さな事例:他者への責任を背負う覚悟

ある起業家は、立ち上げ期に売上が安定せず、自分が早朝にビル清掃のアルバイトに出て、採用したアシスタントの給与を払いました。自分が採用した人への責任を果たすためです。この姿勢こそ、経営者の品格であり信用そのものだと感じます。

4.事業は、あなたの“姿勢”がつくる

事業で長く続く人は、例外なく人を欺かない人です。取引先にも、顧客にも、従業員にも。経営とは、あなたの人格と価値観を社会の中で可視化する営みであり、理念はその心の姿勢を外側へ翻訳したものです。

5.終章──あなたの理念を、どうか言葉にして社会へ

事業とは、自分の人生をどう生きるかを社会に問うことです。あなた自身の理念をどうか大切にしてください。飾る必要はありません。あなたの生きてきた道のりから生まれた想いをていねいに言葉にしてみてください。それは確かな灯台となり、あなたの事業を長く導いてくれるはずです。