2025/11/23

《第6回》あなたの会社を守る「法務の基本」──トラブルを防ぐ小さな工夫

《第6回》あなたの会社を守る「法務の基本」──トラブルを防ぐ小さな工夫

小さな会社にとって最大のリスクは、
「知らないうちにトラブルの種を育ててしまうこと」です。
大きな企業には法務部がありますが、個人事業や小規模法人にはそれがありません。

しかし、安心してください。
会社を守るために必要な“法務の基礎”は、特別な知識ではなく、
「小さな習慣」と「ちょっとした工夫」だけで大きく変わります。

● 1.契約書は“読むため”にある──雛形のコピペは危険

ネットの雛形は便利ですが、
そのまま使うと、あなたの会社には合わない条文が混ざることがあります。

大切なのは、自分の業種に合わせて調整すること
特に次の3点は、必ず自分の目で確認しましょう。

  • 納品物の定義(どこまでが仕事か)
  • 責任範囲(どこから先は相手の責任か)
  • 支払い条件(いつ・どのように入金されるか)

この3つが曖昧な契約ほど、トラブルにつながります。
完璧でなくて構いません。
「自分の言葉で説明できる契約書」なら、それだけで強力な武器です。

● 2.記録を残す習慣が、あなたを守る

実は、揉め事の多くは「言った/言わない」から生まれます。
だからこそ、ちょっとした記録が会社を守ってくれます。

  • 重要なことはメールで残す
  • 打ち合わせ後に簡単なメモを送る
  • 相手からの指示はスクショで保存

法務の世界では、“証拠は味方”
完璧な書類よりも、日々のメモの積み重ねが、あなたを守ります。

● 3.「目的条項」は未来の事業の“許可証”になる

会社の定款にある「目的(事業内容)」は、
ただのリストではなく、未来の事業を広げる鍵です。

一般的すぎても意味がなく、細かすぎても動けなくなります。
最適なのは、あなたの理念に沿った“幅のある目的”です。

たとえば、 「人と人のつながりを支援するイベント企画業」 「地域の安心に寄与する生活サポート業」 など、理念をにじませながら柔らかく書くと、未来の幅が広がります。

● 4.困った時は、早めの相談があなたを救う

トラブルは、早い段階であれば小さな修正で済みます。
逆に、放置すればするほど大きくなります。

行政書士でも税理士でも弁護士でも、
「誰に相談していいかわからない」前に動くことが一番大切です。

相談は、弱さではありません。
事業を続けるための立派な“経営判断”です。

● まとめ──法務とは、会社の“安心の土台”

小さな会社を守るのは、派手な戦略ではありません。
静かで、小さくて、見えにくい「法務の基礎」です。

契約、記録、定款、相談。
どれも地味に見えますが、ひとつひとつが会社を支える柱になります。

明日のあなたの仕事を、今日のあなた自身が守るために。
法務の基本を、どうか軽く見ないでください。

次回は、シリーズの最終回。
商いを続けるために一番大切な「自分らしい働き方と会社の育て方」についてお話しします。

文責:岩瀬薫子(行政書士)