《第2回》夫婦・一人でも設立できる一般社団法人のすすめ
会社をつくるほどでもない。けれど、個人事業では「継続性」や「信用力」に不安がある。
そんなときに、静かに力を発揮する存在が一般社団法人です。
一般社団法人は、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づく非営利型の法人です。
“非営利”といっても、事業活動で収益を上げてはいけないわけではありません。
収益は得てもよいが、構成員(社員)に利益を分配しない──この一点が会社との大きな違いです。
● 一般社団法人は「二人いればつくれる」
設立のために必要なのは、わずか社員2名(夫婦・友人・親子でも可)。
資本金も不要で、登記費用も株式会社よりずっと抑えられます。
実務上は夫婦や個人の想いを中心に、小さく始められる法人形態として注目されています。
● NPO法人との違い
一般社団法人は、しばしばNPO法人と混同されますが、仕組みや義務は大きく異なります。
- 設立手続きが軽い(NPOのような行政庁の審査・認証が不要)
- 所轄庁への毎年の事業報告義務なし
- 事業の自由度が高い(営利事業も可能)
- 役員構成や内部規律を柔軟に設計できる
非営利の法人格をさっと立ち上げたい、教室運営や地域活動を法人化したい──そんなニーズに非常に適しています。
● 活用できる場面は、実はとても広い
一般社団法人は、次のような「社会と接点のある活動」に向いています。
- 音楽・文化教室、ギャラリー、講座運営
- 地域コミュニティやサークルの母体
- 高齢者の見守り・支援サービス
- 専門家チーム(士業・講師・コンサル)の“共同の器”
- 中高年の再出発プロジェクト・学び直しの場
「利益を配る必要がない事業」、あるいは「想いでつながる活動」に、もっとも相性のよい法人です。
個人事業では伝わりにくい“社会性”や“継続性”を、法人という形で裏付けることができます。
● 一般社団法人のメリット
- 非営利ゆえの信用力(公共性・中立性が評価されやすい)
- 代表が代わっても法人は続く(継続性)
- 資金を集めやすい(助成金・補助金の対象になりやすい分野も)
- 個人より社会的受け皿として使いやすい
- 収益事業を行ってもOK(会計は区分して管理)
“一般社団”という名前は地味ですが、じわじわと社会的信用を与える法人格です。
● ただし、注意点もあります
魅力が多い一方で、次の点には注意が必要です。
- 利益配分はできない(社員への配当は禁止/法第11条)
- 私物化の疑いを持たれやすいため、会計透明性は必須
- 「名ばかり非営利」の団体は社会的信用を落とす
- 収益事業の法人税は課税される(法人税法第2条)
- 将来、公益認定を受けたい場合はより厳格な管理が必要
重要なのは、「なぜこの法人をつくるのか」を明確にすること。
理念に支えられた法人は、どれだけ小さくても強く、長く続きます。
次回は、小さな経営に向く「合同会社」という制度を取り上げます。
柔軟で、会社法の中でも“いちばん自分サイズの法人”といわれる形態です。
文責:岩瀬薫子(行政書士)