2025/11/12

第3回 電話一本で資産が消える──還付金詐欺・AI音声の新手口

第3回:電話一本で資産が消える──還付金詐欺・AI音声の新手口

「区役所の○○課です。医療費の払い戻しがあります」「年金の過払い分をお返しします」──。 一見まじめで丁寧な電話から、数分後にはATMの前に立たされている。 これはもう“古典的な詐欺”ではなく、AIと巧妙な心理操作を使った“現代型の罠”です。

■電話詐欺の進化──「声」で信じさせる時代へ

警察庁の統計によると、令和5年(2023年)の特殊詐欺認知件数は16,072件、被害総額は約361億円に上り、その約8割を高齢者が占めています。([npa.go.jp](https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/special_fraud/R05/R05_higaijoukyou.pdf?utm_source=chatgpt.com))

近年は「息子や孫の声」をAIで模倣する“なりすまし詐欺”も確認されています。 本物と区別できない自然な声で、「交通事故を起こした」「示談金が必要」と言われ、本人確認が取れないまま送金してしまう例も。 AIの登場により、“親子関係の信頼”がそのまま狙われる時代になっています。([caa.go.jp](https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_policy_cms204_240603_01.pdf?utm_source=chatgpt.com))

■還付金詐欺の典型パターン

  1. 「医療費」「介護保険料」「年金」の還付金があると電話が入る。
  2. 「今日中に手続きが必要」とATMに誘導。
  3. 「ATMで返金番号を入力してください」と操作を指示。
  4. 実際には“送金”になっている──という仕組みです。 総務省・消費者庁が繰り返し注意喚起しています。([soumu.go.jp](https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu05_02000387.html?utm_source=chatgpt.com))

■「うちは大丈夫」と思う人が危ない

被害者の多くが「自分だけは大丈夫」と感じていた人たちです。 だまされるのは“情報に弱い人”ではなく、“信じたい人”です。 社会的地位がある人、家族思いの人ほど、冷静さよりも「早く助けなければ」という感情で行動してしまいます。

■支える立場の人ができる予防策

  • 親や高齢の親戚と「ATMでは返金されない」「役所や銀行が電話でお金を指示しない」と繰り返し確認しておく。
  • 電話の録音機能や迷惑電話対策機器を設置する。 消費者庁は「自動応答型の警告メッセージ」が有効としています。([caa.go.jp](https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/?utm_source=chatgpt.com))
  • 地域で不審電話の情報を共有する。 警察庁の「#9110」や自治体の防犯メールを活用。

■行政書士としてのメッセージ

電話一本で人生の貯蓄が消える時代。 AIの声や行政を装う発信は、私たち誰にでも届きます。 だからこそ「ひとりで判断しない」「お金・契約の話は必ず第三者に確認する」ことを、家族の合言葉にしてください。

行政書士としては、こうしたトラブルに巻き込まれたときの証拠保全契約確認もサポートできます。 ただし、最も大切なのは「被害に遭う前に話せる関係を持っておく」こと。 つながりは最大の防御です。

※ 次回(第4回)は「“孤独”を狙う──SNS・マッチング・交流詐欺の実態」を取り上げます。

 
出典・参考資料
消費者庁:消費者白書・高齢者トラブル対策・注意喚起情報 等
国民生活センター:最新の消費者被害事例・見守り情報
警察庁:特殊詐欺統計・防犯情報・相談窓口 (#9110) 関連資料
内閣府 高齢社会白書:高齢者の生活実態・特殊詐欺被害の動向
総務省:防災・防犯・ICT安全利用に関する啓発資料
消防庁:点検商法・消防用設備を装う詐欺等に関する注意喚起

※ 本シリーズの記事内容は、上記行政庁・公的機関の公表資料に基づき執筆しています。
※ 統計・制度・注意喚起の引用は最新公開データ(2023~2024年度)を参照しています。