2025/11/10

夫婦のかたち”を守る契約──遺言・任意後見・死後事務委任のちがい|岩瀬行政書士事務所

“夫婦のかたち”を守る契約──遺言・任意後見・死後事務委任のちがい

「再婚をきっかけに、制度のことを少し調べてみたら、
“遺言”“後見”“委任契約”と、いろんな言葉が出てきて混乱しました。」 そんな声を、最近よくお聞きします。

どれも「大切な人を守る契約」ですが、目的と効力のタイミングが違います。 今回は、夫婦やパートナーの関係を支える3つの契約について、 わかりやすく整理してみましょう。

① 遺言──亡くなったあとに効力が生じる契約

遺言(いごん)は、亡くなったあとに効力を発揮する唯一の契約です。 相続人や受遺者に対して、財産をどう分けるかを法的に示します。

  • 効力が発生するのは「死亡の瞬間」から
  • 公正証書遺言なら、家庭裁判所の検認が不要
  • 内縁関係の方に財産を残したい場合、遺贈(いぞう)の形で意思を残す

つまり、遺言は「この先の安心」を贈るための準備です。 相続権のないパートナーを守りたいときや、子ども世代への配慮が必要なときに、 特に大切な仕組みになります。

② 任意後見契約──判断力が落ちたときに備える契約

人はいつか、判断力が衰えるかもしれません。 任意後見契約は、そのときのために「信頼できる人に支えてもらう」契約です。

  • ご本人が元気なうちに公正証書で契約を結ぶ
  • 将来、判断能力が低下した時に家庭裁判所が後見を開始
  • 後見人が、財産管理・契約・福祉サービスの手続きなどを代行

つまり、任意後見は「生きている間を守る契約」です。 夫婦のどちらかが体調を崩しても、互いの生活を支える仕組みとして安心です。

③ 死後事務委任契約──亡くなった直後の手続きを託す契約

意外と知られていないのが、この死後事務委任契約。 遺言とは異なり、亡くなった直後から葬儀・役所届出・病院精算などを委任できる契約です。

  • 「死後に必要な事務」を生前に信頼できる人へ託す
  • 遺族が遠方・高齢・不在の場合にも対応できる
  • 行政書士が受任者となるケースも多い

誰かに「自分の代わりに手続きをお願いできる」だけで、 残される人の負担も、ご本人の不安も大きく軽減します。

契約を交わすのは、“信頼”を形にすること

どの契約にも共通しているのは、「信頼関係を明確にする」という点です。 書面に残すことは冷たいことではありません。 「あなたを信じています」「あなたを守りたい」――その思いを制度の形にする行為です。

夫婦のかたちはそれぞれ。 入籍していても、内縁でも、血縁でも。 契約は、愛と責任の両方を支えるやさしい仕組みなのです。

制度を知ることは、信頼を形にする第一歩。
そして、それが“安心して生きる力”になります。

人生の後半だからこそ、制度を味方にして、 穏やかで、自分らしい「夫婦のかたち」を整えていきましょう。

ご相談・お問い合わせはこちら (遺言・後見・死後事務委任の作成支援を行っています)


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次回予告

家族と暮らす方だけでなく、“おひとりさま”も安心でいられるように。
「人とのつながり」を契約と記録でどう支えるか──
をお届けします。