2025/11/6

「ひよこ食いに遭わないために――信頼で始まる私の開業」

ひよこ食いに遭わないために――信頼で始まる私の開業

独立したばかりの頃、私はまだ法務の実務経験がなく、ゼロからの挑戦でした。 リクルートを離れたばかりでしたが、心のどこかには「法務のプロとして人の役に立てる仕事をしたい」という想いがありました。 おひとりさまや離婚相談など、生活に寄り添う仕事をしたい――それが、今のスタイルの原点でした。

そんな時期に出会ったのが、あるホームページ制作会社でした。 「行政書士として成功したノウハウをもとに、あなたのブランディングも支援します」 という触れ込みに惹かれ、方向性の打ち合わせに臨みました。

その担当者は、私よりずっと若い男性。 会話の途中でこう言いました。 「先生は、建設って感じですね。」 その言葉に、私は一瞬、戸惑いました。 建設業許可の仕事をしたこともなく、興味も薄かったのです。 けれど相手は“実績のある専門家”のように見えた・・・。 『自分に見えない強みを見抜いてくれたのかも』と、違和感を押し込めてしまいました。

結果、その違和感は的中しました。 提案はどこか表面的で、私の思いや方向性が反映されないまま。 完成したホームページを見たとき、私は静かに思いました。 「これは、私の事務所ではない。」

違和感は、心のセンサー

あの経験から学んだのは、「違和感は、心のセンサー」だということ。 誰かの言葉に説得力があっても、自分の感覚がざらつくときは、何かがズレています。 見た目の実績や肩書きよりも、誠実さと尊重の姿勢を見極めること。 それが、ひよこ食いに遭わないための第一歩です。

「儲かる」より「続けられる」

独立直後の不安は、誰もが抱えます。 だからこそ“儲かるジャンル”という言葉がまぶしく見える。 でも、続けていくうちに気づくのです。 「儲かる」より「続けられる」ことが、本当の安定だと。

自分が興味を持てる仕事、自分の感性で支えられる分野。 そこに少しずつ集中することで、仕事は自然と形になっていきます。 苦手分野に無理をすると、お客様の質問に応えきれず、信頼を損なうこともある。 好きと得意の交差点こそ、事業の核になります。

「最初の仕事は、ご祝儀のようにやってくる」

単発でも、誠実にやり切れば、それが次の信頼になる。
信頼こそが、最初の資本です。

信頼は、人から人へ渡っていく

初期の依頼は本当にさまざまでした。 契約書、相続、遺言、行政手続、時には相談だけで終わることも。 でも、どんな依頼でも誠実に取り組んでいると、不思議と縁がつながっていきました。 「先生に頼んで良かった」という言葉が、どんな広告よりも励みになります。

信頼は、デザインや肩書きではなく、一件一件の真心から生まれる。 ひよこ食いに疲れた方へ。 焦らず、誠実さで積み上げてください。 それが、いちばん強いブランディングになります。

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