2025/11/5

資格は“ゴール”ではなく“スタート”――私たちは経営者になる|ミドルシニアの挑戦力(岩瀬行政書士事務所)

資格は“ゴール”ではなく“スタート”――私たちは経営者になる

合格発表の日。名前を見つけた瞬間、胸が熱くなります。あの長い勉強の日々が報われた――そう思える一方で、不思議な静けさが訪れます。資格を取っても、明日から急に仕事が降ってくるわけではない。ここからが、もうひとつの試験の始まりです。

行政書士として開業するということは、つまり「経営者になる」ということです。 誰かに雇われるのではなく、自分の理念と努力でお客様の信頼を得ていく世界。 私も最初は、「資格があれば仕事は自然に来る」とどこかで思っていました。けれど、現実は違いました。

資格は“入口”であって、名刺ではない

開業して最初の半年間は、依頼があっても業務の種類がバラバラでした。相続、遺言、在留、契約書…。 まるで日替わり定食のように違うテーマを扱う毎日。正直、効率も悪く、生産性などまったく上がりません。 でも今思えば、その時期こそが「自分の軸」を見つけるための実習期間だったのです。

仕事のジャンルにこだわるよりも、「自分を信じて頼んでくれた方を大切にする」こと。 その積み重ねの中で、ようやく方向性が見えてきました。 すぐに結果が出なくても、誠実さは必ずどこかで返ってきます。

仲間と学び続ける安心

行政書士会には、研修や勉強会、相談窓口があります。私は大阪府行政書士会に所属していますが、研修の数も多く、実務を学ぶ機会が豊富です。 「一人開業」でも「独りぼっち」ではない。 困ったときに相談できる先輩がいる。共に学ぶ仲間がいる。これだけで心強いのです。

だからこそ、合格してすぐに「資格をどう使うか」を考えるより、「どう生きていきたいか」を考えることが大切です。 資格はゴールではなく、人生の再設計のための道具。 あなたの経験・価値観・人間力が、すべて業務の中で息をします。

経営者になるということ

私は開業当初、「経営」という言葉が苦手でした。法律のことは勉強しても、売上や集客、マーケティングには抵抗感があった。 でも、あるとき気づいたのです。 行政書士も、ひとつのビジネス。 お客様の課題を聞き、解決策を提案し、喜んでもらって報酬をいただく。 これは、どんな業界でも共通する商売の基本です。

「行政書士も、結局は“普通の仕事”なんです。」
商品がモノではなく、安心と時間を提供する仕事。
だからこそ、誠実さとわかりやすさが最大の武器になります。

学び直しは、未来の投資

もしこれから開業を考えている方へ伝えたいのは、「経営の勉強を避けないでほしい」ということです。 難しい理論ではなくてもいい。マーケティングの基本、数字の見方、SNSの使い方――少しずつでも、確実に力になります。 学び直しは、年齢を問わず、未来への投資です。

小さくても、自分の旗を立てる

開業して10年、私はいまでも「小さな旗」を掲げている気持ちでいます。 見えない風に揺れながら、でも倒れない旗。 自分の理念に正直に、丁寧に。 それが、ミドルシニアとしての強さだと思います。

資格はスタート地点。 ここから始まる人生の第二章を、どう描くか。 私たちは、いくつになっても“未来の新人”でいられます。

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開業初期に感じた葛藤と、信頼関係を軸にした事務所づくりをお伝えします。